こんにちは

前回前々回に引き続き、ピタゴラス数の話をします。

前々回の最後に、
「互いに "違う形" の整直角三角形は無数にあるだろうか?」
という問いかけをしました。

また、前回、「既約ピタゴラス数」という概念を定義しました。

既約ピタゴラス数の言葉を使って問いを書き直してみると、
「既約ピタゴラス数は無数にあるだろうか?」
となります。

今日は、この問いの答えを書きます

ピタゴラス数のおさらい


まず、ピタゴラス数の定義や性質について軽くおさらいしておきます。
詳しい証明などは、前回前々回の記事を参照してください。

整数の組 $(a,\ b,\ c)$ が「ピタゴラス数」であるとは、
等式 $a^{2}+b^{2}=c^{2}$ が成り立つときをいいます。

特にピタゴラス数 $(a,\ b,\ c)$ の最大公約数が $1$ のとき、これを「既約ピタゴラス数」といいます。


$(a,\ b,\ c)$ が既約ピタゴラス数のとき、
$a,\ b$ のうち片方は奇数、もう片方は偶数となります。

したがって、
\begin{eqnarray}c^{2}&=&a^{2}+b^{2}\\&=&奇数^{2}+偶数^{2}\\&=&奇数+偶数\\&=&奇数\end{eqnarray}
より $c$ は奇数となります。


既約ピタゴラス数は無数にあるか?


前々回の問いをもう一度思い出してみましょう;
「既約ピタゴラス数は無数にあるか?」

答えは、YES です。

これは、次の定理によって裏付けられます;

定理. 整数 $a,\ b,\ c$ について、次は同値である。
(1) $(a,\ b,\ c)$ は既約ピタゴラス数である。
(2) 互いに素で偶奇の異なる整数 $m,\ n$ を用いて、$a,\ b,\ c$ は次のように表される;
\begin{eqnarray}a=m^{2}-n^{2},\ b=2mn,\ c=m^{2}+n^{2}\end{eqnarray}

この定理は、既約ピタゴラス数が無数に存在することを言うばかりでなく、
既約ピタゴラス数の分類を完全に与える素晴らしい定理です


定理の証明


さっきの定理を証明します。
いろいろな証明方法が知られていますが、ここでは初等的な証明を与えます。


【(1) $\Longrightarrow$ (2)】

まず、$a,\ b$ のうち片方は奇数でもう片方は偶数であることに注意しておきます。
$a$ を奇数、$b$ を偶数、$c$ を奇数とします。

$(a,\ b,\ c)$ はピタゴラス数なので、
\begin{eqnarray}b^{2}&=&c^{2}-a^{2}\\&=&(c+a)(c-a)\end{eqnarray}
です。

今 $c$ と $a$ は共に奇数なので、$c+a$ と $c-a$ は共に偶数です。
よって、ある整数 $M,\ N$ を用いて
\begin{eqnarray}c+a&=&2M,\\ c-a&=&2N\end{eqnarray}
と表せます。したがって、
\begin{eqnarray}a&=&M-N,\\ c&=&M+N\end{eqnarray}
となります。

$(a,\ b,\ c)$ の既約性から $a$ と $c$ は互いに素なので、$M$ と $N$ も互いに素となります。
また、
\begin{eqnarray}b^{2}&=&(c+a)(c-a)\\&=&4MN\end{eqnarray}
です。
左辺が平方数なので、右辺の $M$ と $N$ も平方数となります。
つまり、ある整数 $m$ と $n$ が存在して次が成り立ちます;
\begin{eqnarray}M&=&m^{2},\\ N&=&n^{2}\end{eqnarray}
このとき、次が成り立ちます;
\begin{eqnarray}a&=&m^{2}-n^{2},\\b&=&2mn,\\c&=&m^{2}-n^{2}\end{eqnarray}
また、$a=M-N$ が奇数だから $M$ と $N$ の偶奇は異なるので、$m$ と $n$ の偶奇も異なります。


【(2) $\Longrightarrow$ (1)】

$(a,\ b,\ c)$ のピタゴラス性は明らかなので、既約性を示します。

$a,\ b,\ c$ の最大公約数を $d$ とします。
つまり、ある整数 $A,\ B,\ C$ が存在して次が成り立ちます;
\begin{eqnarray}a=dA,\ b=dB,\ c=dC\end{eqnarray}
今、$m$ と $n$ の偶奇は異なるので、
\begin{eqnarray}dC&=&m^{2}+n^{2}\\&=&奇数^{2}+偶数^{2}\\&=&奇数\end{eqnarray}
より $d$ は奇数です。

$d$ が奇数で、$dB=2mn$ なので、
$d$ は $m,\ n$ の少なくとも一方を割り切ります。

また、
\begin{eqnarray}dA&=&m^{2}-n^{2}\\&=&(m+n)(m-n)\end{eqnarray}
より $d$ は $m+n,\ m-n$ の少なくとも一方を割り切ります。

整理すると、次の $2$ つが成り立っています;
・$d$ は $m,\ n$ の少なくとも一方を割り切る。
・$d$ は $m+n,\ m-n$ の少なくとも一方を割り切る。

したがって、$d$ は $m$ も $n$ も割り切ります。

今、$m$ と $n$ は互いに素なので、$m$ と $n$ の公約数は $1$ だけです。
よって、$d=1$ が示されました


おまけ


前節の証明では $b^{2}=(c+a)(c-a)$ という分解を考えましたが、
$a^{2}=(b+c)(b-c)$ という分解を考えても証明ができます。

ぜひみなさん考えてみてください


また、今回は初等的な代数を使って証明をしましたが、
この定理は 図形を使った証明 や 簡単な代数的整数論を使った証明 も知られています。

そのうち、そういった別証もこのブログに書こうと思います


ではでは。


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