こんにちは.

前回前々回に引き続き,ものの個数の数え比べシリーズ 第 $3$ 弾です!

中学校で習う数(実数)の分類の仕方に,「有理数」と「無理数」で分類する方法があります.
有理数とは,分母分子が整数であるような分数で表せる数のことで,
無理数とは,そのような分数で表せない数のことです.

たとえば $\frac{1}{2}$ や $3=\frac{3}{1}$ や $0.2=\frac{1}{5}$ などは有理数です.
それに対して,$\sqrt 2$ や円周率 $\pi$ などは無理数であることが知られています.

では,この分類の仕方は数を均等に分けているのでしょうか?
つまり,有理数全体の個数と無理数全体の個数は同じなのでしょうか?

今回は,その疑問を解決します!


前回までのおさらい


$2$ つの集合 $A$ と $B$ の要素の個数を数え比べるとき,
数学では,$A$ から $B$ への要素同士の対応を作って考えます.

$A$ から $B$ への対応 $f$ で,
次の $2$ つの条件をみたすようなものを「全単射」といいます.
・$A$ の相異なる要素を入力すると,$B$ の相異なる要素が出力される.(単射)
・$B$ のどの要素も,$A$ の何かしらの要素を入力して得られる.(全射

全単射な対応が作れるとき,$A$ と $B$ は要素の個数が同じだと言えました.


自然数と同じだけある個数のことを「可算個」といいます.

前回の記事で,有理数は可算であることを確認しました.

今回は,実数全体や無理数全体について考えていきましょう!


実数は可算ではない!(カントールの対角線論法)


実数全体の個数は,自然数よりも「たくさん」あります.
つまり,実数は可算ではありません.
この節では,これを証明します.


まず,$0$ と $1$ の間にある実数は実数全体と同じだけあります.
なぜなら,対応 $f(x)=\tan(\pi(x+\frac{1}{2}))\ (0<x<1)$ が全単射だからです.

よって,$0$ と $1$ の間にある実数全体が自然数よりたくさん存在することを示せばいいです.
これを,「背理法」を使って示します.


自然数全体から $0$ と $1$ の間にある実数全体への全単射 $g$ が作れてしまったと仮定します.
つまり,
$0$ と $1$ の間の実数 $x$ はどれも、なにか自然数 $n$ を用いて $x=g(n)$ と表せるとします.

$g(n)$ を小数で表したときの小数第 $k$ 位を $a^{(n)}_{k}$ と書くことにします.

つまり,次のような状況になっています;
\begin{eqnarray}
g(1) &=& 0.a^{(1)}_{1}a^{(1)}_{2}a^{(1)}_{3}\cdots\\
g(2) &=& 0.a^{(2)}_{1}a^{(2)}_{2}a^{(2)}_{3}\cdots\\
g(3) &=& 0.a^{(3)}_{1}a^{(3)}_{2}a^{(3)}_{3}\cdots\\
&\vdots&
\end{eqnarray}
さて,整数の列 $x_{1},\ x_{2},\ x_{3},\ \cdots$ を次のように定めます;

まず,$x_{1}$ は $0$ から $9$ までの整数のうち $a^{(1)}_{1}$ と異なるものとします.
つまり,例えば $a^{(1)}_{1}=1$ なら $x_{1}=0$,$a^{(1)}_{1}=0$ なら $x_{1}=1$ などとします.

次に,$x_{2}$ は $0$ から $9$ までの整数のうち $a^{(2)}_{2}$ と異なるものとします.

同様にして,$x_{n}$ は $0$ から $9$ までの整数のうち $a^{(n)}_{n}$ と異なるものとします.


そして,小数 $x$ を次のように定めます;
\begin{eqnarray}
x=0.x_{1}x_{2}x_{3}\cdots
\end{eqnarray}
仮定より,この $x$ はある自然数 $n$ を用いて $x=g(n)$ と表せるはずです.
今,左辺の小数第 $n$ 位は $x_{n}$ で,右辺の小数第 $n$ 位は $a^{(n)}_{n}$ なので,
$x_{n}=a^{(n)}_{n}$ となります.
ところが,これは $x_{n}$ の作り方 $x_{n}\neq a^{(n)}_{n}$ に矛盾します.

よって仮定は誤りで,$0$ から $1$ までの実数全体は可算ではありません.
したがって,実数全体も可算ではありません.


(余談ですが,この証明は,$19$ 世紀のドイツの数学者カントールが編み出しました.
彼の名にちなみ,この証明方法を「カントールの対角線論法」といいます.)


可算ではないような個数のことを,「非可算」といいます.
つまり,非可算とは,自然数よりもいっぱいあるということです.


無理数全体は可算?非可算?


ここで,状況を整理しておきましょう.

自然数全体と同じだけの個数を「可算」といい,
もっと多いものを「非可算」といいました.
そして,有理数全体は可算で,実数全体は非可算でした.

では,無理数全体はどうなのでしょうか?


答えを言ってしまうと,無理数全体は非可算です.
この節では,これを証明します.

これも背理法で示します.

無理数全体が可算であると仮定してみます.
つまり,無理数全体に漏れなく番号が付けられるとします.

また,有理数全体にも漏れなく番号が付けられることに注意しておきます.

さて,自然数全体から実数全体への対応 $f$ を,前回の記事の例 $2$ と同じように作ります.
つまり,
\begin{eqnarray}
f(2n) &=& n番目の有理数,\\
f(2n+1) &=& n番目の無理数
\end{eqnarray}
とします.

すると,この対応 $f$ は自然数全体から実数全体への全単射となっています.
つまり,実数全体は可算であることになります.

ところが,前節で見たように,実数全体は本当は非可算です.
これは矛盾しています.

よって仮定は誤りだったということになります.
つまり,無理数全体は非可算であるということです.


まとめ


無限の種類について,
自然数と同じだけの個数を「可算」といい,もっとたくさんの個数を「非可算」といいました.

有理数全体は可算です.
そして,実数全体や無理数全体は非可算であることを確認しました.

よって,有理数全体よりも無理数全体の方がたくさんあるということが分かりました!


おまけ


「個数の数え比べシリーズ」と称していろいろな無限の個数について紹介しましたが,
次のような素朴な疑問を抱いた人も多いでしょう;

「自然数全体より多くて実数全体よりは少ないようなものはあるのか?」

今回の記事ではこの話題について扱いませんが,
興味のある人は「連続体仮説」というキーワードで調べてみると面白いと思います.


また,興味のある人は,

「無限の個数で,自然数全体より少ないものはあるのか?」,

「実数全体よりももっともっと多いものはあるのか?」

などといったテーマを考えて「研究」してみるのも,楽しいと思います.


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