こんにちは.

ものの個数の数え比べシリーズ 第 $2$ 弾です.

前回は,少ないものの個数の数え比べについて考えました.
今回は,「無限個のものの個数の数え比べ」について考えてみましょう

「無限の世界」には不思議な現象がいろいろあって面白いです

前回のおさらい


前回の記事で説明した「ものの個数の数え比べ方」を,軽くおさらいしておきます.

$2$ つの集合 $A$ と $B$ の要素の個数を数え比べるとき,
数学では,$A$ から $B$ への要素同士の対応を作って考えます.

$A$ から $B$ への対応 $f$ で,
次の $2$ つの条件をみたすようなものを「全単射」といいます.
・$A$ の相異なる要素を入力すると,$B$ の相異なる要素が出力される.(単射)
・$B$ のどの要素も,$A$ の何かしらの要素を入力して得られる.(全射

全単射な対応が作れるとき,$A$ と $B$ は要素の個数が同じだと言えました.

無限個のものの個数を数え比べるときも,全単射な対応が作れるかどうかを考えます.


自然数を基準にして考えよう!


$0,\ 1,\ 2,\ 3,\ \cdots$ と続く整数を,自然数といいます.
つまり,$0$ 以上の整数のことを自然数といいます.

(もしかすると,自然数を $1$ 以上の整数と習ったことのある人もいるかもしれません.
自然数は,$0$ から始める流儀と $1$ から始める流儀があります.

どちらの流儀も間違いではなく,
数学では,時と場合によって $2$ つの流儀をうまく使い分けます.

余談ですが,イギリスなんかでは自然数は $0$ から始める方が「自然」なようです.
その証拠に,イギリス英語では地上階のことを「ground floor ($0$ 階)」といい,
いわゆる $2$ 階のことを「first floor ($1$ 階)」といいます.

今回の記事では,$0$ から始める流儀の方が説明しやすいのでこちらを採用します.)


さて,自然数はこの先よく登場するので,自然数全体の集合に名前をつけておきます.
自然数全体の集合を $\mathbb{N}$ とおきます.
つまり,$\mathbb{N}=\{0,\ 1,\ 2,\ 3,\ \cdots\}$ です.

この $\mathbb{N}$ を基準に,いろいろなものの個数を見ていきましょう!


例 $1$
負の整数全体の個数は,自然数全体と同じだけあります.

なぜなら,$\mathbb{N}$ から負の整数全体への全単射な対応 $f$ を次のように作れるからです;
$f(0)=-1,\ f(1)=-2,\ f(2)=-3,\ \cdots,\ f(n)=-n-1,\ \cdots$


ものの個数が自然数全体 $\mathbb{N}$ と同じだけあるとき,
その個数は「可算個」であるといいます.

言い換えると,可算個とは,
要素のひとつひとつに番号を付けて数えられるということです.


練習問題
正の偶数全体は可算です.
例 $1$ のやり方にならって,全単射な対応を作ってみてください


無限個の世界は不思議がいっぱい!


「無限個」の世界では,直感に反するような不思議で奇妙な現象がよく起こります.
そのような面白い例を,いくつか紹介します.


例 $2$
整数全体は可算です.

なぜなら,自然数全体から整数全体への全単射な対応 $f$ が次のように作れるからです;
$f(0)=0,\ f(1)=-1,\ f(2)=1,\ f(3)=-2.\ f(4)=2,\ f(5)=-3,\ f(6)=3,\ \cdots$
つまり,この対応 $f$ は次のようになっています;
$f(2n)=n,f(2n+1)=-n$

すなわち,奇数番目の自然数を $0$ 以上の整数に対応させ,偶数番目の自然数を $-1$ 以下の整数に対応させています.


例 $2$ の結果は,奇妙な感じがしますね.

自然数って,整数をプラスとマイナスに分けたうちのプラスだけ集めたものだから,
直感的には自然数の方が整数よりも少なくなりそうな感じがします.

ところが,実際に数え比べてみると,自然数も整数も同じだけあることが分かりました.
「無限個」の世界では,このような面白い現象がよく起こります.


面白い例を,もうひとつ紹介します.


例 $3$
分母分子がともに整数であるような分数のことを,有理数といいます.

$0$ 以上の有理数全体は,可算です.
つまり,$0$ 以上の有理数の個数は,自然数と同じだけしかありません.
このことを説明します.

$0$ 以外の自然数はすべて $2^{n}(2m-1)$ ($n\ge0,m>0$) の形で表されることに注意しておきます.
例えば,$60$ は $2^{2}\times 15$,$8$ は $2^{3}\times 1$,$21$ は $2^{0}\times 21$ と表せます.

自然数全体から $0$ 以上の有理数全体への対応 $f$ を次のように作ります;
\begin{eqnarray}\displaystyle f(0)=0,\  f(2^{n}(2m-1))=\frac{n+1}{m}\end{eqnarray}
この対応によって,有理数は可算であると分かります.

(本当は,約分して同じになるものに注意してもう少し細かい議論が必要ですが,
長くなるので省略します)


例 $3$ も,不思議な感じがしますね.

数直線を思い浮かべてみると,整数は等間隔にポツポツと点在しています.
それに対して,有理数はわりとギッシリ詰まっている感じがします.

直感的には有理数の方が整数よりも多そうな印象があるのに,
実際には有理数も整数も可算個で同じ個数なんですね.


まとめ


自然数全体と同じだけの個数のことを,「可算」といいました.
そして,整数全体や有理数全体が可算であるという不思議で面白い例を確認しました.

今回の記事で見た無限集合は,どれも可算でした.
では,無限個のものは必ず自然数全体と同じだけの個数になるのでしょうか?

次回は,個数の数え比べシリーズ 第 $3$ 弾として,
その疑問を解決します!


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